2014-05-27 特許と分割出願

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1 今回の判例    特許と分割出願

 

知財高裁 平成26年2月26日判決

 A社は、平成22年6月11日、発明の名称を「レンズ駆動装置」とする特許出願をしました。これは、平成17年11月14日に行った出願を原出願とする分割出願でした。

 なお、当該分割出願にかかる発明は、「レンズ駆動装置としての寸法を更に小さくすることができるという技術上の意義を有する、内側周壁を有しないレンズ駆動装置」に関するものでした。

 そして、同出願については、特許庁が拒絶査定をし、これに対する不服審判によっても拒絶査定は覆らなかったため、A社は、平成25年3月13日、当該審決の取消しを求める本件訴訟を提起しました。

 

2 裁判所の判断

 裁判所は、以下の理由でA社の主張を認めませんでした。

  • 分割出願が、原出願時に出願したとみなされるためには、分割出願にかかる発明が、原出願の願書に最初に添付した明細書若しくは図面(原出願の当初明細書等)に記載されていること、又はこれらの記載から自明であることが必要である。
  • 本件の分割出願にかかる発明は「内側周壁のない構造のヨーク」を発明の一部とするところ、当該発明は、原明細書に記載されているということはできず、磁路を形成するために内側周壁を必須の構成とする発明に関する原明細書の記載から自明であるということもできない。
  • 以上によれば、当該分割出願は、分割要件を充足するものではない。

 

3 解説

(1)分割出願とは

 特許出願の分割(分割出願)とは、二つ以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願に分割することをいいます(特許法第44条)。言い換えると、当初の特許出願(原出願)の明細書に記載した発明の一部をいわば抜き出して、新たに特許出願することともいえます。

 分割出願の最大のメリットは、「出願日の遡及」にあります。すなわち、原出願後の新たな特許出願であるにもかかわらず、分割出願の出願日が、原出願の出願日に遡ることができるということです。例えば原出願が2008年になされ、分割出願が2012年になされた場合も、法律上の要件を満たせば、分割出願も2008年に出願したとみなされるわけです。

(2)実務上の分割出願の活用1~早期の権利化

 ある企業は、分割出願を自社技術の効果的な保護のために戦略的に活用しています。

 例えば、ある特許出願について拒絶理由通知又は拒絶査定を受けた場合に、一部の請求項について拒絶理由の指摘を受けるというケースがあります。例えば、請求項が5個あり、請求項1と3に拒絶理由が存在するとの指摘を受けるという場合です。

 この場合、当該指摘に対して意見書・補正書を提出して審査官に反論する方法が多く取られますが、その後の審査が長期化し権利化に時間がかかるかもしれません。それで、拒絶理由がある請求項(上の例では、請求項1と3)を抜き出して分割出願することで拒絶理由を解消し、特許査定を受け、一部だけを早期に権利化するという方法です。

(3)実務上の分割出願の活用2~効果的な権利行使のために

 特許出願して数年後、他社から類似品が発売されるというケースで、出願した請求項の権利範囲だけでは当該類似品への権利行使が難しい、という場合が考えられます。

 この場合、特許請求の範囲や明細書の補正で当該類似品をカバーすることができる場合もありますが、補正の場合、時期的な制限で無理な場合もあります。

 それで、こうした類似品について自社の特許権でカバーできるように、明細書の記載や図面にある事項を取り出して分割出願するという方法が検討できるわけです。

 以上は分割出願の活用目的の一部ですが、上のように、弁理士などの専門家のアドバイスを得て特許法の制度をフル活用することはより自社の権利保護に資するものとなるものと思います。

 

参考ページ:特許法解説 https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/tokkyo/index/


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