2013-04-30 製品の特許表示と品質等誤認惹起行為
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1 今回の判例 製品の特許表示と品質等誤認惹起行為
大阪地裁平成24年11月8日判決
A社は、自社の製造・販売する巻き爪矯正具につき、国際的な特許で保護されているとの記載や、特許を取得している専用のワイヤーであると記載していました。
これに対し、B社は、A社のウェブサイトにおけるそのような特許に関する記載が不正競争防止法2条1項13号(品質等誤認惹起行為)に該当するとして、広告宣伝における当該表示の使用差止を求めました。
なお、A社の製品は、ドイツのある会社の発明の実施品であり、その発明はかつてドイツ・米国で特許を受けていましたが、それぞれの特許は、すでに失効していました。
2 判決の内容
裁判所は以下のとおり判断しました。
- 一般に、商品に付された特許の表示は、当該商品が特許発明の実施品であると受け取られる。それで、そのような表示は、当該商品が独占的に製造・販売されているかのような情報や、商品の技術水準に関する情報を提供するものとして、不正競争防止法2条1項13号にいう「品質」の表示といえる。
- A社は、その製品につき、実際には特許発明の実施品ではなくなったにもかかわらず、国際的な特許で保護されているとか、特許を取得しているといった表示を付し、少なくともいずれかの国・地域の特許発明の独占的実施品であるかのような情報を需要者に提供している。かかる行為は、「品質」を誤認させるような表示をした不正競争行為に該当する。
3 解説
(1)「品質等誤認惹起行為」とは
不正競争防止法2条1項13号において規定する「誤認惹起」とは、シンプルにいえば、商品やサービス自体、またはその広告や関連書類等に、その原産地、品質、内容、用途等について、誤認をさせるような表示をする行為をいいます。
そしてこのような行為は不正競争の一つとして、差止請求や損害賠償請求の対象となります。この点裁判所は、ある製品が特許製品であると表示することは「品質」に該当するとし、そして、特許が消滅したにもかかわらず特許製品と表示することは品質等誤認惹起行為となると判断したわけです。
(2)ビジネス上の留意点
確かに、ある製品について特許製品であることの表示を行うことには、一定のメリットがあると考えられます。例えばそのような表示によって、革新的で優れた製品である旨を間接的にアピールできるといえますし、また、第三者にこれを模倣することを躊躇させ、紛争や侵害の防止に役立つという面もあります。
また、第三者の観点からも、当該製品に付されている特許表示を見て、特許の有無を調査し、侵害を事前に回避することにもつながります。
しかし、以前に権利を持っていたとしても、現在は権利が消滅してしまっている場合には、漫然と同じ特許表示を行い続けると、前記のとおり不正競争行為と判断されてしまう場合がありますから、この点権利の存続期間を把握するとともに、表示や広告をしっかりと見直す必要があります。
また、この点は、製品を輸出したり輸入したりする場合にも問題となります。それは、特許権は、通常、各国ごとに登録されるものだからです。
例えば、外国にしか特許がない製品を輸入する場合に、単に「PAT」とのみ表示するならば、これは品質等誤認惹起行為と判断されるおそれがあります。この場合、「USAPAT」等、外国の特許であることを誤認なく認識されるような表示にするなどの留意が必要です。
他方、仮に日本では登録を受けていても、輸出先の国で登録を受けていない製品について、特許製品である旨を表示したまま輸出した場合、その外国において責任を負うことがありえます。
このように、商業上の効果とコンプライアンスのバランスを考えた適正な表示を心がけることは重要なことではないかと考えられます。
参考ページ:特許法解説 https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/tokkyo/index/
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