2013-02-05 消費者団体訴訟制度と違約金条項
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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。 |
1 今回の判例 消費者団体訴訟制度と違約金条項
京都地裁平成24年7月19日判決
携帯電話の契約において、2年間といった一定期間契約をする代わりに通話料を割り引き、そして中途解約の場合に違約金を支払うことになるという規定は珍しくありません。
この訴訟では、適格消費者団体であるAが、携帯電話サービスを提供するB社に対し、そのような解約金を定める契約条項が、消費者契約法9条1号・10条により無効であると主張して、同法12条3項に基づき、B社に対し、上記解約金条項を内容とする契約をすることの差止を請求しました。
2 判決の内容
裁判所は、消費者契約法9条1号にいう損害について、解約によってB社に生じる平均的損害として計算し、その結果、契約締結・更新月から数えて22か月目の月末までに解約がされた場合に解約金支払規定は有効であるが、23か月目以降に解約した場合には、「平均的損害の額」の金額を超過する解約金支払規定は、超過額の限度で消費者契約法9条1号により無効であると判断しました。
3 解説
(1)消費者団体訴訟制度とは
本稿では、平成19年6月からスタートした比較的新しい制度である消費者団体訴訟制度について取り上げたいと思います。
従来、民事訴訟とは、相手方に対して法律上の権利を持つ人自身が起こすべきものであって、(例外はあるものの)直接的に権利がない第三者が訴訟を起こすことはできませんでした。
しかし、今回の例のような携帯電話の契約など、一方当事者が消費者であり、かつ請求できる金額が少額であるような場合、その当事者個人が訴訟を起こすことは、訴訟の費用や手間を考えると現実的には無理ということが少なくありませんでした。
それで、こうした問題を解決し、不特定多数の消費者の利益を守るため、消費者団体訴訟制度が導入されました。つまり、事業者の不当な勧誘行為や契約条項の使用に対する法的な差止請求権を適格消費者団体に与え、当該消費者団体が事業者に差止訴訟を起こすことができるようになったわけです。
(2)差止請求の対象となる行為
現時点では、差止請求の対象となる事業者の行為は以下のようなものです。
■ 消費者契約法に違反する行為
(不当な契約条項、不当な勧誘)
■ 景表法違反行為(優良誤認表示)
■ 特定商取引法関連:
◇「訪問販売」
(不実告知等、クーリング・オフ、過大な違約金)
◇「通信販売」(不実告知等)
◇「電話勧誘販売」
(不実告知等、クーリング・オフ、過大な違約金)
◇「連鎖販売」
(不実告知等、クーリング・オフ、中途解約条項)
◇「特定継続的役務提供」
(不実告知等、クーリング・オフ、中途解約条項)
◇「業務提供誘引販売」
(不実告知等、クーリング・オフ、過大な違約金)
(3)事業者としての留意点
消費者向けの事業の場合、消費者である顧客が事業者と個別に契約条件を交渉するということはなく、事業者側が約款や定形の契約書を用意して消費者にサインを求める、という運用が一般的です。
そして多くの消費者は、約款の規定を検討することなく契約していると思われます。そのため実は少なからず存在していた消費者側に不当に不利な取引条件が、消費者団体訴訟制度が整備される前であれば顕在化することなく使用されていたと思われます。しかし、消費者団体訴訟制度によって、そうした取引条件が顕在化する、というリスクがより増大するようになったと考えられます。
もちろん、事業者としては、消費者団体訴訟制度が整備される前であっても、消費者側に不当に不利益を与える契約を締結すべきではないことはいうまでもありません。しかし、前記のような訴訟リスクや、さらに敗訴した場合に事業者のレピュテーションに与えるダメージ等を考慮すれば、以前にも増して一層、この点留意すべきであると考えられます。
そのため、事業者としては、自主的な判断のもと、法的な観点から消費者との契約内容を見直し、消費者契約法その他の趣旨に沿った運用に努めることが、消費者にとっても、また当該事業者の長期的利益の観点からも重要であるといえるかもしれません。
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