ポイント解説国際法務 国際裁判管轄 (2)国際条約
本稿では、日本が加盟する条約のうち、国際裁判管轄規定が含まれるものについて解説します。
ワルソー条約28条1項
この条約の正式な名称は「国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約」(Convention for the Unification of Certain Rules Relating to International Carriage by Air またはConvention pour l’unification de certaines regles relatives au Transport aerien international)というものです。この条約は、航空運送契約に関する運送人の権利義務を詳細に規定しています。また、事故が生じた場合の運送人の責任についても規定しています。
そして、ワルソー条約28条1項には、国際航空の運送人の責任に関する訴につき、原告の選択により、「いずれか一の締約国の領域」において、以下の場所の裁判所に提起しなければならないと規定されています。
- 運送人の住所地
- 主たる営業所所在地
- 契約を締結した営業所の所在地
- 到達地
モントリオール条約33条1項
この条約もワルソー条約と同様、国際航空運送における航空運送人の責任や損害賠償の範囲等について定める条約です。これは、ワルソー条約が近年の情勢にそぐわないこと等に鑑みワルソー条約が見直され締結されたものです。
そして、モントリオール条約33条1項にも、ワルソー条約28条1項と同様の国際裁判管轄に関する規定があります。さらに同条2項には、旅客の死亡又は傷害から生じた損害についての損害賠償の訴えについては、一定の場合に、事故の発生の時に旅客が主要かつ恒常的な居住地を有していた締約国の領域における裁判所に提起することができる、と定めています。
油濁民事責任条約
1992年に改定された油濁民事責任条約(International Convention on Civil Liability for Oil Pollution Damage、CLC条約)という条約があります。
この条約では、原油等の持続性油を輸送している船舶からの油の流出・排出による汚染によって生ずる汚染損害、防除措置の費用、及びその結果損害について、登録船舶所有者が原則として厳格責任(無過失賠償責任)を負うという規定、一定のタンカーの船舶所有者に対する強制保険の規定等が定められています。
そして国際裁判管轄という点では、CLC条約9条1項には、賠償請求の訴えは、汚染損害が生じたか、又は損害防止措置がとられた締約国の裁判所にのみ提起することができると規定されています。
また、CLC条約の同条2項においては、各締約国に対して「自国の裁判所が1項に規定する訴えについての管轄権を有するようにする」ことを義務づけています。なお日本では、この条約の規定を受けた国内法である船舶油濁損害賠償保障法12条において、タンカー所有者に対する訴えは、他の法律により管轄裁判所が定められていないときは、最高裁判所が定める地の裁判所に管轄に属すると規定しています。
加えて、CLC条約10条では、外国判決の承認執行についても規定されています。そして、前記油濁損害賠償保障法12条においても、次の例外を除き、外国判決が日本において効力を有することが規定されています。
- 判決の詐欺取得の場合
- 訴訟開始の呼出等の送達を受けず、かつ、意見陳述の公平な機会が与えられなかった場合
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