解説会社法~株式と株主
株主の権利
株主の権利の分類
株主は、会社の所有者(オーナー)として、会社に対し様々な権利を持っています。大きく分けると、以下の2つの分類に分けることができます。
自益権 : 株主が、会社から経済的利益を受けることを内容とする権利
共益権 : 株主が会社の経営に参画することを内容とする権利
自益権の主な内容
まず株主の権利のうち、自益権としては、主に、以下のようなものがあります。
- 剰余金配当請求権(105条1項1号)
- 残余財産分配請求権(105条1項2号)
- 株式名簿名義書換請求権(会社法130条)
- 株式買取請求権(160条、469条、785条)
- 取得請求権付株式の取得請求権(166条)
- 株式の割当を受ける権利(202条1項)
- 株券交付請求権(215条)
共益権の主な内容
共益権については、単独株主権(1株でも持っていれば行使できる権利)と、少数株主権(一定割合・一定数の株式を持つ株主が行使できる権利)があります。 それぞれについては、主に以下のようなものがあります。
■ 単独株主権
□ 株主総会における議決権(308条1項)
□ 閲覧等請求権
株主名簿の閲覧・謄写(125条)
取締役会議事録の閲覧・謄写(371条)
計算書類等の閲覧・謄写(442条)
貸借対照表の閲覧・謄写(496条)
□ 差止請求権
募集株式発行差止請求権(210条)
新株予約権発行差止請求権(247条)
取締役の行為差止請求権(360条)
執行役の行為差止請求権(422条)
略式組織再編行為差止請求権(796条)
□ 訴えの提起権
会社の組織に関する行為の無効の訴え(828条)
株主総会決議取消訴訟の提起権(831条1項)
株主代表訴訟提起権(847条以下)
■ 少数株主権
□ 株主総会招集請求権(297条) | 議決権の3/100以上(*) |
□ 議題提案権、議案通知請求権(303条2項、305条) | 議決権の1/100以上又は300個以上の議決権(*) |
□ 株主総会の招集手続等に関する検査役選任請求(306条) | 議決権の1/100以上(*) |
□ 業務の執行に関する検査役の選任請求(358条) | 議決権の3/100以上 |
□ 会計帳簿閲覧請求権 | 議決権又は発行済株式の3/100以上 |
□ 簡易合併等に対する反対権(796条4項) | ぎりぎりの定足数で特別決議を否決できる議決権以上を有する株主 |
□ 役員解任の訴えの提起(854条) | 議決権の3/100以上(*) |
(*) 公開会社では、6か月前から引き続き有する株主に限る。 |
株式の種類
普通株式と種類株式
会社法では、改正前の旧商法と比べて、異なる権利を付与した複数の種類の株式を発行できるようになりました。以下は、非公開の中小企業に絞って考えてみることとしますが、いわゆる従来からある「普通株式」のほか、以下の9個の事項について、普通株式とは内容の異なる「種類株式」を発行することができるようになりました。
(1) 剰余金の配当
(2) 残余財産の分配
(3) 株主総会において議決権を行使できる事項(議決権制限種類株式)
(4) 譲渡制限(譲渡制限種類株式)
(5) 株主から会社への取得請求権(取得請求権付種類株式)
(6) 会社による強制取得(取得条項付種類株式)
(7) 総会決議に基づく全部強制取得(全部取得条項付種類株式)
(8) 定款に基づく種類株主総会の承認(拒否権付種類株式)
(9) 種類株主総会での取締役・監査役の選任(選解任種類株式)
種類株式の発行手続
種類株式の発行については、定款に定めることが必要です。それで、設立後に種類株式を発行する場合定款変更が必要となります。
それで、定款変更のために、株主総会の特別決議が必要となります。また、すでに種類株式を発行している会社が、発行済のある種類株式に対し、新たに別の内容の規定を設ける場合は、当該種類株主による種類株主総会特別決議(ケースによっては種類株主総会の特殊決議、又は当該種類株主全員の同意)が必要となります。
株式の譲渡と譲渡制限
株式の譲渡は自由か
株式の譲渡は、原則として自由です(会社法127条[条文表示])。しかし、会社法では、定款で、株式の譲渡について会社の承認が必要とする旨を定めることができます。
実際、ほとんどの中小会社は、会社にとって望ましくない者が株主となることを防止するという趣旨から、そのような定めを置いています(このような会社を「非公開会社」と呼んでいます)。それで、大半の中小企業では、株式の譲渡は自由ではありません。
しかし、株主が死亡し、相続人がその株式を相続する場合には、会社の承認は不要です。
譲渡承認機関
株式の譲渡請求に対して、承認をする機関は原則として、以下のとおりです。
取締役会設置会社の場合
取締役会設置会社の場合には、取締役会が譲渡承認機関です(会社法139条1項[条文表示])。
しかし、定款で別段の定めをすれば変更できます(会社法139条1項ただし書)。それで、取締役会設置会社の場合、承認機関を取締役会ではなく株主総会にすることができます。
取締役会設置会社の場合
取締役会非設置会社の場合には、承認をする機関は株主総会となります(会社法139条1項[条文表示])。
しかし、取締役会設置会社の場合と同様、定款で別段の定めをすれば承認機関を変更でき、取締役会非設置会社のケースで承認機関を株主総会ではなく代表取締役にしたり、という変更が実務上認められています。
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